--------------------
流行性肝炎の病原と疫学
兒玉 威
1
1神奈川県衛生研究所
pp.16-23
発行日 1956年9月15日
Published Date 1956/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201729
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
まえおき
現在本病を名指すものとして流行性肝炎Epidemic hepatitisと伝染性肝炎Infectioushepatitisの両者が通用している。実際本病は集団的或は流行性に発生する場合もあるが,散発性に発生する場合が多いから,後者の名称の方が適しているかもしれない。流行性肝炎は最近,臨床医学の面からだけでなく公衆衛生の面からも非常に注目されるようになつてきた。しかし,本病のように,なお未知の部分の多い感染症を理解するためには,病原・疫学・病理及び臨床を綜合的に観察して行くことが望ましく,病原とか疫学とかをそれぞれ切り離して論ずることは適切を欠くおそれがある。
本病に関しては多数の文献の外に,既にW.Siede5),北岡正見1),小田俊郎2),中村隆3),斎藤宏4)等の著書があり,1954年までの報告は殆んどこれに網羅されているといつてよい。更に1954年第28回日本伝染病学会総会の交見演説「流行性肝炎について」において原亨(大阪医大),小坂淳夫(岡大),斎藤宏(名市大)3氏の詳細な研究発表があり,また1955年第2回ウイルス学会総会ではシンポジウムとして「流行性肝炎の病原と病理」がとりあげられ,天野重安(京大),村上栄(岡大),奥野良臣(阪大)諸氏の研究発表8)及び討議が行われた。
Copyright © 1956, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.