臨床實驗
老人性白内障の薬物療法
鴻 忠義
1
1千葉大学眼科
pp.408-412
発行日 1954年3月15日
Published Date 1954/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410201814
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老人性白内障の藥物或は非手術的療法としては従来,沃度加里,水晶体蛋白,水晶体免疫血清及びビタミンC等の点眼,注射或は内服が行われて居り,最近は各種ホルモンも有効であるといわれて居るが,夫々の効果に就いては讃否交々であつて,例え奏効したとしても恨らくは臨床的にも亦,実験的にも明確な根拠に乏しい。乍然老人性白内障は視力障碍が漸次進行して失明に至る公算が極めて大であるから,例え視力恢復に期待がかけられなくとも,其の進行を阻止し得る療法であれば,当然試るべきであつて,視力障碍が進行してからの手術を期待しているのは如何にも無為無策というべきでしよう。
文献を渉獵すると,非手術的療法として最初に用いられたのは沃度加里であつて,此れは早くから佛学者によつて試みられて居たもので,Gondret(1828)は同剤の内服を行つたのが始りで,爾来,Badal(1901),Martin(1908)等は結膜下注射,点眼或は眼浴を行つて居ります。Römer(1908)は動物水晶体蛋白を錠剤としたLenticolinの内服が初期白内障に有効であるといつている2)7)。伊東教授1)(1925)は10年間の経験から,沃度加里イオントホレーゼが有効であることを述べ,同時に沃度加里及びヂオニンの点眼を併用することをすゝめた。DaviSは海猽水晶体或は人間の白内障水晶体にて免疫した家兎血清又は牛水晶体で免疫した羊血清の静脈内注射を試みている。
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