臨床實驗
カーバイドによる角膜損傷
中島 章
1
1同和鉱業花岡鉱山病院
pp.377-379
発行日 1954年3月15日
Published Date 1954/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410201807
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カーバイドによる眼外傷は,石灰によるものゝ症例と共に近頃の雑誌に症例報告を散見するが,いづれも軽く,経過良好で後遺症を残す事なく,治癒した症例ばかりである1)2)。而して中村氏1)によれば,カーバイドによる眼腐蝕の報告は殊に内外共に少く,外国で数例日本でも2,3例に過ぎないと云う。では,カーバイドによる眼腐蝕が,それ程に稀なものであろうか?我が国の金属鉱山では,前から坑内の局所照明にカーバイドランプを使用して居り,最近は蓄電池式キヤツプランプに段々と切り換える所も出て来たが,未だカーバイドランプを使用している所の方が多い現状である。カーバイドを扱う機会が多い所程事故の機会も多い理窟であるから,恐らく金属鑛山ではヵーバイドにょる眼腐蝕の症例もあつたのであろうが,今迄報告がなされなかつたのではなかろうかと思われる。此の鑛山では,坑内勤務者約900名が殆んどヵンテラ(カーバイドランプ)を使用して居り,1月のカーバイド使用量は1トン余りに達している。
カンテラ1個にはカーバイドが約100gm入るから,此の鑛山で1月当り約1万回カンテラにカーバイドを詰める計算になる。カンアラにカーバイドを詰めるには,大塊を金槌で割つて小さくして詰めるのであるが,カーバイドはかなり硬いので,粉末が高速度で四散し眼に入る事もあり,これが角膜に飛入するとかなり深層迄達して,角膜の腐蝕を起す。
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