表紙の裏話
ペットの角膜損傷を再生医療で救う
藤田 直己
1
1東京大学大学院農学生命科学研究科獣医外科学教室
pp.1436
発行日 2013年11月15日
Published Date 2013/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542103718
- 有料閲覧
- 文献概要
診察台の上で暴れる患者をなだめ,時には蹴られたり引っかかれたりしながらも丁寧に診察する.手術となれば術中はもちろん,術前の麻酔にも気をつかい,術後は言うことを聞かない患者にやきもきしながら管理に頭を悩ませる.臨床に携わる者なら誰もが経験する病院での1コマである.しかし,診察対象はヒトではない.われわれは,獣医外科学研究室で日々多くの動物の診察を担当し,年間800件の手術をこなしながら研究に従事している.そのため,臨床に密接に関連した研究テーマを扱っているところが大きな特徴である.特に,現在筆者が関心をもっているのは再生医療分野である.
当院にはさまざまな疾患を抱えた動物が来院するが,重度の角膜疾患で受診する犬も多い.角膜とは,眼瞼,結膜とともに外眼部を構成する組織で,透明な膜である.角膜は直接外界に接することから,感染,アレルギー,外傷など多様な疾患に罹患する可能性があり,重症例も後を絶たない.犬の重症角膜疾患の場合は,結膜の一部を角膜に移植する手術なども行われるが,炎症や色素沈着,瘢痕形成など合併症が多いことが問題となっている.一方,角膜移植はドナーの確保も難しく,ほとんど実施されていないのが現状である.そのため,犬においても角膜再生治療が求められるケースが少なくない.
Copyright © 2013, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.