銀海餘滴
葉緑素
pp.977
発行日 1953年11月15日
Published Date 1953/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410201669
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葉の緑色は,1871年にPelletier等がChloropyyll (邦譯,葉緑素と命名し,1906年以降Willslatter等がこれを分離精製して,その化學構造まで明かにした。これと平行して赤い血色素の研究が主としてH.Fischer等により進められ,1928年には,そのヘミンの化學構造が決定した。偉大な兩研究者群はさらに夫々を人工的に合成することにまで,殆んど成功している。
さて,此の兩化合物は,いずれも大變に複雑な化學構造を持つているが,その分子構造を較べると,ビニール核が4つ向きあつている3型であることに全く一致し,かつその中心に,金屬原子1個を有する點でも全く同じである。異るところは,些少の側鎖の違いはさておき,葉緑素の中心がマグネシウム原子,ヘミンの中心が鐵原子であることに過ぎない。前者即ち葉緑素は,高等植物たる櫻や薔薇の葉から,單細胞の緑藻にまでの何れにも含まれており,植物と動物の移行域に在る下等動物たるミドリムシの單細胞の内にも多數の葉緑粒がある。
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