綜説
葉緑素誘導體に關する研究
赤須 文男
1
,
河原 節
1
1東邦醫科大學婦人科教室
pp.13-18
発行日 1950年1月10日
Published Date 1950/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200299
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第1章 緒論
近年の所謂化學療法の進歩は實に目覺ましいものであるが,微生物に依つて惹起される疾病に對する治療法全般の進歩の跡を辿つて見ると,直接病原體を殺す方法(昇汞,リゾール,サルバルサン,アクリフラビン等)と生體の抗菌力を高める方法(蛋白體療法,輸血,オムナジンなど)とが並行して進められて來ている.然し最近のサルフア劑,ペニシリン,ストレツプマイシンなどに到ると殺菌力でなく病原體の發育増殖阻止であり,この場合,必然的に體力の強さが要求されている.この様に,生體の體力はどうしても最後の運命を決するものと云わなければならない.それ故,この體力を増強させる方策は,それが全身的であつても(癌の全身療法など)局所的であつても(從來の各種の物理療法など)常に研究進歩されなくてはならない.この意味に於て,葉緑素Chlorophyllの廣用は極めて注目に價するものと我々は考える.
Chloropltyllは衆知の如く植物の葉中に含まれている緑色の色素で,Carotin,Xanthophyllだとの所謂リポクロームと共に葉緑粒中に含まれている.この研究は1837年Berzelius時代から行われてゐると云うが,今日に於てはWillstatter,Fischer,Stollなどによつてその構造式が明かにせられた.それは血色素が膽汁色素に似て居り次の如くである.
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