臨床實驗
狂犬病豫防接種後麻痺における視束症状の意義—Virusによる實驗的球後視束炎への示唆
桑島 治三郞
1
1東北大分院眼科
pp.512-515
発行日 1951年8月15日
Published Date 1951/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410200917
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さきに私は中心暗點を伴う球後視束炎の病原をVirusと考えで,その發現機序を考察する時,より合理的な説明をなし得る病型のあることについてのべた(本誌5卷7號)。
曾てvirusの特長として擧げられた不可視性と濾過性という大いさの上の特長は,今日もはやその絶對性を失い,生活細胞を加えない人工培地によつては培養が不可能であるという生物學的特長だけが,この微生物の唯一の特長として残されるに到り,この特性こそが頑固な細胞趨向性と表裏一體をなすものであり,Virusが特定の生活細脈の榮養と庇護の下においてのみ増殖を營み得るという事實,換言すれば,この事實が必然的にVirusの臓器親和性と直結して臨床症状と不可分の關係を保つものであることが明かにされ,この意味から臨床症状の評價が特に重要視される。視束が胎生學上ならびに神經學上,あるいは解剖學的にも腦および脊髓と極めて近い相似關係に立つことは周知の事柄である。一方,多くの原發性炎性中樞神経疾患の病原として多數のVirusが明かにされつつある今日,上記の相似性から類推しで,Virusを病原とする球後視束炎の發現を推論することは容易に共感をよぶことができるものと信ずる。然し,これを實験的に證明することは上述せるVirusの特性から考えても極めて多くの困難を伴うものであることは,これまた容易に肯定される處である。
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