臨床實驗
トラコーマ固定病毒に關する研究—第1報 トラコーマ及び流行性角結膜炎の材料を以てのマウス腦内接種實驗
上野 弘
1
,
後藤 忠子
1
1京府醫大女專
pp.435-438
発行日 1951年7月15日
Published Date 1951/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410200893
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1.緒論
弓削並に私は,トラコーマ(以下トと略す)の疾病本態が廣義のアレルギー(以下アと略す)性疾患であろう事を,トの症候學的研究を基礎として推論して以來,此理論的假説を確證せんが爲,私はトの細胞形態學的,病理組織學的検索を行い,其所にア性反應を窺わしめる所見を捕捉し,次で土田は動物實驗より結膜の一般組織ア性變状の基本形式を追求して,其成果としてトの病理組織學的變状にア性變化が關與するものでないかと推定した。以上の如く,トえのア學説導入の妥當性に就て,順次實驗を進め,茲に免疫血清學的立場より實證が當然必要となつて來た。今回の私共の研究倭未だ初歩的段階に在るが,トに關して,抗原抗體間の反應と見做し得可き過程の存する事が判明し,私共の研究目的の道が拓かれた。
トの諸研究,就中免疫血清學的部面よりのそれが,非統一的で或限界内に停頓して進歩しない最大の理曲の1つとして,好適なる實驗動物が容易には得難い點に在る事は自明の事實である。從來,諸種の動物を對象として,其腦内えのト病毒の接種實驗が諸家に依て實施せられてはいるが,決定的な結論が樹てられていない。最近此方両に於て注目に値する報告として,Braley (1949)の包括體性膿漏眼病毒のマウス腦内接種實驗があるが,荒川,北村(1950)はト病毒を同樣なる方法で分離固定する事に成功した。私共も荒川の方法に從つて固定病毒作成に成功し,トの免疫血清學的研究えの應用が可能となつた。
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