臨床實驗
網膜剥離の臨床知見補遺—第3篇 鋸状縁断裂に際する網膜眞性嚢胞に就て
百々 次夫
1
1倉敷中央病院眼科
pp.523-525
発行日 1950年12月15日
Published Date 1950/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410200735
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緒言
網膜層内に液性の内容を充す空洞を形成する変状の内で.類嚢胞変性cystoide Degenerationと呼ばれる小形のものが少なからず見出されるのに反して,孤立性眞性嚢胞isolierte echte Cysteと名付けられる大形の嚢形成は遙に稀である.それらの檢眼鏡的所見は,何れも綱膜剥離治療の発達普及に伴つて明かにせられた.然しその意義に就ては,類嚢胞変性が網膜裂孔の前段皆変状として異論なく重視されているのに対して,孤立性眞性嚢胞に関する見解には,尚一致を見ない点が殘されている.即ち或る研究者は,鋸状断裂を呈する剥離網膜に高い頻度で孤立性眞性嚢胞を認めて,嚢胞の断裂に対する原因的関聯を高く評價するのに,他方では鋸状縁断裂の場合に全然嚢胞を見たことがないとして,之に反対する者もある有樣である.
著者は網膜剥離約850眼の観察に於て,この孤立性綱膜眞性嚢胞を僅に2眼に認めたが,両例は共に鋸状縁断裂を示すものであつた.その内第1の例は布村一島によつて既報されているので,本篇には第2の症例を記載し併せて考察したいと思うのである.
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