綜説
間腦照射と綱膜機能
大橋 孝平
1
1慈惠医大
pp.223-229
発行日 1950年6月15日
Published Date 1950/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410200591
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緒言
余の教室では永い間,間脳照射に関する研究をやつているので今迄の結果を簡單に説明して見ようと思う.昭和17年教室の中村正直博士が始めて本邦に於て眼科領域に於ける間脳照射療法の業績を報告(日眼誌46,47卷)して以來,既に当教室の間脳照射(以下間照と記す)の症例は,今日迄檢査確実のもの約百数十例に達したので,今日迄に判明して來た眼科領域間脳問題に関する知見を総括して見よう.
最初この脳下垂体照射が何等か視器に好影響を及ぼすであろうと考えた所以のものは,一に本法が從來副交感神経系に何等かの影響を與えると考えられていて特殊の血管拡張作用のある点と慶大安藤画一教授,松本氏等によつて提唱された所謂間脳照射が自律神経照射であつて,植物神経系失調を調整する作用ありとする点,更に間脳脳下垂体系の失調によつて局所循環系,色素と皮質に障害を起すと考えられる樣な眼疾患殊に網膜色素変性の樣な夜盲性疾患に恐らく何等か好影響を與えるのではないかとの見解より,該症に間照を試みたところが,案外に其成績が惡くなく,以來本学物療科樋口助弘教授外教室員一同の異常なる御盡力によつて,増々症例を増すにつれて,所謂樋口式間照方式によれば,レ線の間照は明かに網膜機能に向上が認められて,極めて病機の新しい網膜色素変性では,相当に有效率が大きい事が判明して來たのであつて,今迄外國にはこの種の研究報告が無かつたのである.
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