症例
硝子體前癒着症の數例
樋田 敏夫
1
1日本医大眼科
pp.423-425
発行日 1949年9月15日
Published Date 1949/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410200455
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緒言
外傷や後発白内障手術後に,硝子体ヘルニヤが認められることがあるといふ事は屡々成書や文献に記される所であるが,之の前房内に出た硝子体織維が索(スティール)を成して角膜裏面に癒着し恰も虹彩が角膜裏面に癒着せる状態を虹彩前癒着と称する如く,硝子体前癒着症(Synechia corpo-ris vitrei anterior)とも称すべき状態に在ることがあると言ふ報告は既往の文献には殆ど見当らず只エルンスト・フックスの著せるLehrbuch derAugenheilkundeに「外傷や手術に際し硝子体が漏出する事があるが,之の漏出せる硝子体の中で眼内に在るものは,瘢痕として即ち硝子体前癒着として残る」と記され,又アダルペルト・フックスが彼の眼病理組織アトラスの中に,本症の1例の病理組織標本を載せて居る位のものである.私は最近僅々1カ月前後に他医に於て受けし後発白内障手術後の1患者2眼及び当教室に於て施せる後発白内障患者3例3眼に引き続き之の状態を認め取りわけ特異なる術式を用ひたわけでないのに頻々とかかる現象が認められる事から,術後仔細に観察檢査すれば案外かゝる事実を認め得るのではないかと考へ之を御報告し諸賢の御批判を仰ぐ次第である.尚アダルベルト・フックスのアトラスに掲載しある1例の写しと,自驗1例の写生を添へ御参考に供することにする.
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