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はじめに
ラニビズマブ(ルセンティス®)は滲出型加齢黄斑変性(age-related macular degeneration:AMD)の治療薬として2009年にわが国でも承認され,滲出型AMDの平均視力を初めて改善させる抗血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)薬として,しばらく市場を独占してきた。しかし薬価が高額なこともあり,直腸癌の治療薬であるベバシズマブ(アバスチン®)の適応外使用も世界的に黙認され,社会的問題となっている。その後,ようやく新規抗VEGF薬としてアフリベルセプト(アイリーア®)が2012年に承認された。この薬はラニビズマブよりも薬価が安いうえ,強い効果と投与回数を減らせる可能性があり,国内シェアトップとなりつつある。適応拡大に向けた動きも激しく,製薬企業をスポンサーにつけた多施設臨床試験が全世界的に多数行われ,ラニビズマブが,網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫と近視性脈絡膜新生血管(choroidal neovascularization:CNV)に対して使用可能となり,糖尿病黄斑浮腫(diabetic macular edema:DME)に対しても承認される予定である。近い将来,アフリベルセプトも同様に適応拡大されることであろう。本稿では,疾患別に最近の多施設研究の主なものについて紹介する(表1)。
ところで,製薬企業主導の多施設研究は薬剤の販売を目的としている。緻密に計画された大規模臨床試験の結果は,evidence-based medicine(EBM)という言葉が後押しして販売推進の根拠として利用され,製薬会社のマーケティング戦略に医師が踊らされる構図となっている。高いエビデンスとして利用される一方,販売に都合のよいデータのみを強調し,都合の悪いデータには触れずに講演会などで販売促進が行われている。また,個別化医療を目指す観点で貴重な情報を含む少数例の報告はエビデンスレベルが低いと無視され,標準的な治療のみを推奨する風潮がある。これは緑内障の分野などでも同じであるが,医師主導の大規模臨床試験であるCATTスタディなどで,抗VEGF薬が脳梗塞のリスクであることや,滲出型AMDは長い経過の中で地図状萎縮が多く併発し,視力低下の原因となり,ラニビズマブの注射回数がリスクに挙げられるなど,高額医療費の問題だけでなく,副作用にかかわる報告も出てきているため,重大な課題であることを医師が認識する必要がある。
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