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はじめに
光干渉断層計(optical coherence tomography:OCT)は1997年にわが国に紹介され,それ以降さまざまな黄斑疾患の病態解明に貢献してきた。初期型のタイムドメインOCTは1枚のBスキャン撮影に約1秒かかったものの,これまで曖昧に理解されてきた黄斑円孔と偽円孔や黄斑浮腫と黄斑剝離などが判別可能であり,その臨床への貢献は大きかった。その後2006年にはスペクトラルドメイン(SD)-OCTが登場し,それまでの数十倍の高速化・高解像度化を達成したことで,臨床面だけでなく研究面でも使用されるようになってきた。現在では通常の市販機よりも長波長の光源を用いた高侵逹OCTも開発され,さらなる進化をとげている。
一方,中心性漿液性脈絡網膜症(central serous chorioretinopathy:CSC)の典型例は30~40歳代の中年男性に好発し,片眼性に中心窩を含む漿液性網膜剝離が生じる。フルオレセイン蛍光眼底造影(fluorescein angiography:FA)では網膜色素上皮レベルの1か所または複数箇所の蛍光漏出を示すことから,網膜色素上皮のバリア機能の破綻が局所的または広範囲にわたって生じていることが漿液性網膜剝離の発症要因であることは明らかである。さらに1990年代のインドシアニングリーン蛍光眼底造影(indocyanine green angiography:IA)による研究で,脈絡膜血管の充盈遅延や血管拡張および異常脈絡膜組織染が観察され,脈絡膜異常が指摘されるようになった1~3)。特に異常脈絡膜組織染はIAの中~後期に観察され,これは脈絡膜血管透過性亢進を示唆する所見とされる。この脈絡膜血管透過性亢進によって,脈絡膜に貯留した水分が網膜色素上皮のバリア破綻部位を通って網膜下に移動することで漿液性網膜剝離を生じると考えられる。
以上のようにCSCは,視機能に直接関与する網膜障害は脈絡膜の異常,特に脈絡膜血管透過性亢進が発症の一次的原因となって引き起こされていることがわかってきた。これまで脈絡膜は眼血流の8~9割を占めるものの,網膜とは異なりあまり注目されることはなかったが,最近OCTで脈絡膜を観察することがトピックとなっている。そこで本稿では,OCTを用いてCSCの病態を網膜側からだけでなく,脈絡膜側からも合わせて評価してみる。
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