特集 眼科診療:5年前の常識は,現在の非常識!
序
坂本 泰二
1
1鹿児島大学
pp.5
発行日 2011年10月30日
Published Date 2011/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410103898
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今の眼科医は忙しい。猛烈にといってもよいほどである。診断や治療が進歩するのは素晴らしいことであるが,そのために以前より診療に多くの時間が必要になっている。筆者の専門の網膜領域に限っても,以前は眼底検査,蛍光眼底造影検査で十分であったものが,眼底自発蛍光検査,光干渉断層計検査,多局所網膜電図検査などが加わり,診断に要する時間は確実に増加している。また社会からの要求が高まり,治療前後には患者・家族に対して十分な時間をかけて説明することが求められている。さらに,開業医であれば収益維持へのプレッシャー,大学勤務医であれば学生教育や研究に対する過剰な要求もある。この環境下で,眼科すべての領域について,最新知識の習得が求められているのである。
現在,眼科関連の専門書が数多く出版され,インターネットから最先端情報の取得も可能である。しかし,時間に余裕のないこの状況下で,自分の専門外の領域について専門書を紐解くというのは容易なことではない。インターネット情報は玉石混淆であり,その中には明らかな誤りも少なくない。このようなときに,ある眼科医から「自分は少なくとも眼科診療の基礎を備えている自信はあるが,専門外領域については最先端知識があるという自信はない。専門外領域について,最近変化した点についてだけまとめた本があれば,非常に助かる」という言葉をいただいた。確かに,眼科専門医であれば,少なくとも各疾患についての教科書的知識はあるので,そこに最近変化した情報が加わるだけで,各領域の基礎から最新までの知識が備わることになる。
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