特集 新しい時代の白内障手術
Ⅲ.高機能眼内レンズ
屈折誤差への対応―2)乱視のずれ
宮井 尊史
1
1東京大学医学部附属病院眼科
pp.191-195
発行日 2010年10月30日
Published Date 2010/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410103424
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
白内障術後の乱視
現在,眼内レンズは非球面レンズ,トーリックレンズ,多焦点レンズなど高機能眼内レンズが登場し,患者のQOV(quality of vision)の向上のための選択肢が増えてきている。一方,これらのレンズを使用するときには,術後の屈折力誤差が大きいと,その機能を十分に発揮することができない場合がある。白内障手術を行うにあたって,球面度数については眼内レンズの度数選択によってある程度の調整を行うことができるが,乱視に関しては,現時点ではトーリック眼内レンズのみ約1.0~2.0Dの範囲での円柱度数矯正が可能となっているのみであり,非球面眼内レンズ,多焦点眼内レンズにおいては,乱視の影響をほぼそのまま受けることになる。最近の白内障手術は創口の小切開化により惹起乱視が小さくなっているため,術前の角膜乱視が術後乱視に大きな影響を与えることになる。
図1は,白内障手術10,000例の術前角膜乱視度数の分布を直乱視,倒乱視に分けて示したものである。多焦点眼内レンズを用いる場合,良好な視機能を得るために推奨されている乱視度数は一般的には±1.0D以内とされているが1,2),この範囲に該当する症例は全体の約61.7%にしかならない。とくに欧米においては,1.0Dを超える乱視に関しては乱視矯正手術の対象とされる傾向にある1)。実際には,日常生活で必要とされる視力が患者によって異なるが,この基準を用いると3例に1例は潜在的に乱視矯正手術の検討対象となってしまうことになる。
Copyright © 2010, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.