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はじめに
最近の眼内レンズには,表面形状としては回転対称非球面やトロイダル面,さらに機能としては多重焦点性(マルチフォーカル)を持たせた多様な光学系が採用されている。回転対称非球面は見えの最適化のため,トロイダル面は乱視の矯正,マルチフォーカルは遠用のみならず近用の見えも改善するための手段となる。マルチフォーカルにするための技術としては,眼内レンズの表面の形状,つまり非球面性による方法と,回折現象を利用して,その効率を回折次数(通常は0次と1次)に振り分けることによる方法が実用化されている。また,研究的ではあるが調節可能眼内レンズの開発も進んでおり,その収差を含む調節の測定が行われている。
ところで,他覚屈折の測定では近赤外光が使われることが多い1)。臨床で使われているオートレフラクトメータや収差の測定が可能な波面センサーも,現在,日本で販売されているほとんどの装置では近赤外光が使われている。これらの装置の被検者は,測定光を知覚しないか,あるいは弱い赤い光を知覚する程度であるため,まぶしくないうえに,固視表の観察にも邪魔にならないという利点がある。しかし,われわれが物を見るときの波長は可視波長であり,他覚屈折装置で使われている近赤外光とは波長が異なるため,軸上色収差の校正が必要となってくる。
波面センサーは,円錐角膜や白内障などの病眼や角膜屈折矯正術やオルソケラトロジー後の評価で有効な装置であり2,3),眼内レンズ眼の評価にも有効であることが予想できる。ただし,人眼の評価目的で設計された波面センサーが,眼内レンズ眼の正確な測定に利用可能かどうかの検証は必要である。通常の市販されている波面センサー(通常のオートレフラクトメータでも同様)では,眼で見るときに使われる波長帯,可視光での光学的な量を近赤外光による測定で評価可能になるように校正が行われている。簡単に言うと,可視光と近赤外光間での波長の違いによる測定のずれを装置内に定数として持っておいて,これを使って校正をするわけである。しかし,これはあくまで人眼に対しての定数であり,眼内レンズ眼でこの定数が校正に使えるか確認する必要がある。本項では,この確認の結果を報告することはできないが,そのほかにどのような留意点があり,どのような測定が可能であるかを述べたいと思う。
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