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連載 日常みる角膜疾患・81【最終回】
遷延性角膜上皮欠損
Persistent corneal epithelial defect
柳井 亮二
1
,
西田 輝夫
1
Ryoji Yanai
1
,
Teruo Nishida
1
1山口大学大学院医学系研究科眼科学
pp.1854-1857
発行日 2009年12月15日
Published Date 2009/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410103030
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症例
患者:59歳,男性
主訴:右眼の霧視
既往歴:糖尿病と高血圧に対し内服治療中であった。
家族歴:特記すべきことはない。
現病歴:2か月前に耳鼻科で副咽頭間隙腫瘍に対する腫瘍切除術を施行され,術後から右三叉神経麻痺と外転神経麻痺が出現した。1か月前から右眼の霧視を自覚した。近医を受診したところ角膜上皮欠損を指摘され,血清点眼による治療を受けたが角膜上皮欠損の範囲は縮小せず,当科を紹介され受診した。
初診時所見:視力は右指数弁(矯正不能),左0.5(0.8×+0.50D()cyl-1.00D 100°),眼圧は右21mmHg,左15mmHg(トノペン®)であった。右眼の角膜は中央部から下方にかけて周堤を伴った上皮欠損がみられ,実質浮腫を伴っていた(図1)。涙液機能はSchirmerテスト第1法で右2mm,左8mmであった。角膜知覚検査は右5mm未満,左60mm(Cochet-Bonnet知覚計)であった。
治療経過:神経麻痺性角膜症による遷延性角膜上皮欠損という診断でサブスタンスP由来のFGLM-アミド+インスリン様成長因子(IGF-Ⅰ)由来のSSSR点眼治療を開始した。翌日から角膜上皮欠損の面積が縮小し,角膜上皮が被覆された部位から実質浮腫も軽快し,角膜の透明性が徐々に回復した。角膜上皮欠損が完全に消失し(図2),治療開始1か月後に視力は右0.05(0.1×-5.00D)に改善した。以後,当院外来で経過を観察しているが,角膜上皮欠損の再発はみられず,最終診察時の視力は右0.06(0.15×-5.00D)である(図3)。
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