特集 緑内障診療―グレーゾーンを越えて
Ⅰ.診断編
4.視 野
新しい視野計を臨床でどのように用いるか
松本 長太
1
1近畿大学医学部眼科学教室
pp.161-167
発行日 2009年10月30日
Published Date 2009/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410102943
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はじめに
緑内障治療の最終目標は視機能の維持にある。そして,視野検査はその視機能評価において診断,経過観察の両面から欠かすことのできない重要な眼科検査である。
1945年にGoldmann視野計が開発されて以来,手動による動的視野測定が約半世紀にわたり視野検査の主流となった。しかし,Goldmann視野計による動的視野測定は検者の技量に大きく影響されるため,その後Octopus視野計,Humphrey視野計をはじめとする自動静的視野測定に急速に移行していった。視野測定の自動化は同時に視野を数字として定量評価する道を開き,多くの統計学的手法が緑内障視野障害の解析目的に開発されてきた。
しかしながら,視野異常の検出は自動視野計の測定結果をいくら統計学的に解析しても,緑内障に伴う視神経乳頭,網膜神経線維層,網膜神経節細胞レベルの構造的変化に大幅に遅れることが,その後の多くの研究で明らかとなってきた。Quigleyら1)は,自動視野計における感度低下が-5dBなら20%,-10dBなら40%の網膜神経節細胞が障害されていることを報告している。自動視野計の計測が可能なように訓練されたサルを用いた実験緑内障の研究でも,同様の傾向が報告されている2)。さらにコンピュータシミュレーションにおいても,一般的な自動視野計の測定条件では,網膜神経節細胞の高い密度から大きな余剰性が生まれることが報告されている3)。これらのデータはヒトの視神経の障害に対する高い余剰性を示す一方,視野検査による早期緑内障検出の限界も示している。
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