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はじめに
緑内障は非常に緩徐かつ慢性に進行する疾患であり,その治療の目的は視野障害の進行を可能な限り抑制し,将来のQOL(quality of life)の低下を予防することにある。したがって,緑内障患者のフォローアップに際しては,視野障害の進行の有無を適切に評価することが常時求められ,それにより手術適応を含めた治療計画が大きく左右されることを考えれば,視野進行評価を適切に行うことの重要性は明らかである。
しかしよく知られているように,視野検査は自覚的・心理学的検査であり比較的大きな個体内変動(1人の被検者に対し複数回の測定を行った場合の変動)を伴うため,視野障害進行というわずかな経時的変化はその個体内変動に容易に埋もれてしまう。個体内変動の影響をできるだけ小さくする方法の1つとして,より頻回に視野を測定することも考えられるが,患者に対する時間的・心理的負担や限られた医療機器・医療スタッフなどを考慮すれば,すべての患者に頻回の視野検査を行うことは現実的な解決策とはいえないだろう。
そこで,限られた視野測定の結果から視野の真の経時的変化(すなわち視野障害進行)と単なる個体内変動をいかに分離し評価するかが重要な臨床的課題となっており,いくつかの方法論が提唱されている。本項ではそれらの主たるものについて,考え方や実際の方法などについて概説する。これまでの緑内障に関する多施設大規模スタディの多くでもHumphrey視野計(Carl Zeiss Meditec社)を代表とする静的視野計が用いられており1~4),国内でも緑内障患者に最も多く使用されているHumphrey視野計の測定結果をここでは主な題材として用いる。
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