特集 眼感染症診療ガイド
コラム 眼感染症への取り組み・いまむかし
急性網膜壊死とウイルス
臼井 正彦
1
1東京医科大学
pp.282
発行日 2003年10月30日
Published Date 2003/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410101472
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1971年に初めて報告された桐沢型ぶどう膜炎は,当時その原因は不明であったが,この疾患と臨床所見が酷似し,欧米で報告された急性網膜壊死(acute retinal necrosis:ARN)の眼病理検査からヘルペスウイルス粒子が発見され,両疾患にヘルペス群ウイルスの関与が推測され始めた1982年以降,わが国においても桐沢型ぶどう膜炎の病因ウイルスの検索が始まった。1983年に月本らは,桐沢型ぶどう膜炎の硝子体手術時の眼内灌流液から高い単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus:HSV)抗体価を検出した。次いでわれわれも,1984年に29歳の両側性桐沢型ぶどう膜炎患者の眼内液から高い水痘・帯状疱疹ウイルス(varicella-zoster virus:VZV)抗体価の存在を報告した。また1985年には,Witmerによる量的血清学の手法を用いて3例の桐沢型ぶどう膜炎の病因がVZVであることを間接的に証明した。そして,1986年にCulbertsonらがARNの網膜からVZVを分離同定するに至り,ARNの病因としてVZVが決定され注目された。
一方,HSVのARNにおける関与も明らかにされた。1984年にPeymanらは,2例のARNのうち1例からHSV-1の抗原陽性細胞を,他方からはHSV-2の陽性細胞を硝子体液より証明した。桐沢型ぶどう膜炎においても,1987年に高橋らは硝子体液よりHSVのDNAを検出し,1990年には原がHSVに対する高い抗体率を有する5症例を見いだした。その1年前の1989年には,Lewisらが27歳と37歳のARNの硝子体液からHSV-1を分離同定した。
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