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はじめに
疾患の発症に遺伝子がかかわっている疾病を総称して遺伝性疾患と呼び,表1のように分類される。遺伝子の働きは最終的には個体の形態や機能,すなわち遺伝形質・表現型として現れる。各遺伝性疾患の特徴について説明する。
(1)単一遺伝子疾患(メンデル遺伝病):1つの核内遺伝子の突然変異によって引き起こされる疾患で,常染色体優性遺伝,常染色体劣性遺伝,X連鎖劣性遺伝,X連鎖優性遺伝,Y連鎖遺伝の5つに分類される。
(2)2種類以上の遺伝子の変異アレルが関与する疾患:単一遺伝子疾患でみられる遺伝形式をとらないもので,digenic遺伝とtriallelic遺伝(3対立遺伝子)が報告されている。
(3)ミトコンドリア遺伝病:細胞質ミトコンドリアに存在する遺伝子の突然変異によって引き起こされる疾患である。
(4)多因子遺伝病:複数の遺伝子および環境要因の相互作用で起こる疾患の総称である。糖尿病,緑内障,加齢黄斑変性などがある。
(5)染色体異常症:染色体の構成的な数的および構造の異常で生じる疾患の総称である。数的異常としてDown症候群,Turner症候群などがある。微細な染色体の異常でも,多数の遺伝子の増減を伴い,結果として複数の遺伝子病を合併した疾患単位となる場合は,隣接遺伝子症候群と呼ばれる。
(6)エピジェネティック機構による疾患:DNAのメチル化やクロマチン構造の変化などDNA塩基配列以外の変化によって遺伝子発現が修飾を受け,引き起こされる疾患の総称である。網膜芽細胞腫で,DNAミスマッチ修復遺伝子(MLH1)プロモーターのメチル化による,MLH1遺伝子発現抑制が観察されている。
本項では,遺伝性眼疾患でみられる単一遺伝子疾患,2種類以上の遺伝子の変異アレルが関与する疾患,ミトコンドリア遺伝病の家系図を提示しその特徴についてまとめた。
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