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はじめに
感染症における微生物検出のための検査法は,近年の免疫学診断技術および遺伝子診断の進歩に伴い大きく変化,進歩している。従来の微生物学的検査の問題点は,検査の方法が微生物を培養することによっているために,すぐに臨床への反映に結びつきにくいということであった。しかし,生物学の技術革新によって,治療にすぐ反映できる迅速診断が多くの分野で可能になっている。その迅速診断をより速く,より単純化したものが検査キットといえる。検査キットは,特別な装置や器具を必要とすることなく,多くは数十分以内で結果を出せる。それだけ容易になった分,検出限界や偽陽性の問題などがあり,その特性と限界を理解しておく必要がある。
また,今回は触れないが,感染症領域では迅速診断という意味では,従来からの塗抹検査法が最も安価で,速くかつ確実な方法であることを忘れてはならない。グラム染色のみで,前眼部の起炎菌のかなりが確定できる。また,たとえ確定できなくても,背景として得られた細胞が,リンパ球が主体か,白血球が主体か,または上皮細胞かで,細菌性かウイルス性感染かの鑑別がつくし,観察された細菌が常在菌か否かの推定ができる1)。
一方,微生物の抗体や抗原の検出をする免疫学診断法は,培養の時間がかからない分だけ迅速性には優れているが,一般的に感度は低いが特異性は高いものが多い。そのため,偽陽性,偽陰性が認められることに注意をする。臨床検査としてキットが有用な場合は,➀ 本来無菌的である材料を対象とする場合,➁ 本来非常在性の微生物を対象とする場合,➂ 微生物由来の病原分子・毒素を検出した場合などが挙げられる。眼科でキット化された検査の対象はアデノウイルス,クラミジアであり,これは上記 2 にあたり,臨床検査キットとしては使いやすい。すなわち,眼科領域ではキットの結果が陽性(+)であればすべて病原微生物といえる。
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