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患者は29歳,女性。左眼の視力低下と中心暗点を自覚し近医を受診した。精査目的にて3か月後の1994年5月9日に当院を紹介され受診した。視力は右眼0.06(1.5×-5.0D),左眼0.01(0.02×-5.0D),眼圧は両眼とも14mmHgであった。前眼部に炎症所見はなく水晶体も透明であった。また,硝子体にも混濁や炎症は認められなかった。網膜電位図(ERG)は右眼が正常で,左眼は振幅の減弱が認められた。生化学的検査所見はIgAが452.5mg/dl(正常値100~360),血清検査の抗ストレプトリジンO価(ASO)が256(正常値50以下)と高値を示したが抗核抗体,抗DNAは正常範囲であった。ウイルス検査は未施行である。
左眼眼底には黄斑部に瘢痕化した星状の網膜下増殖組織と黄斑部を中心に後極部にかけて多発性のやや萎縮化した黄白色斑状病巣が脈絡膜から網膜色素上皮レベルに散在していた。右眼眼底に異常は認められなかった。走査型レーザー検眼鏡(SLO)によるmicroperimetryで右眼にはscotoma(暗点)を認めなかったが,左眼の黄斑部の瘢痕病巣部とその周囲にdense scotomaを認めた。フルオレセイン蛍光眼底造影では,多発性の黄白色斑状病巣は,初期像では低蛍光のなかに脈絡膜大血管の透見できるwindow defectによる過蛍光を示し,後期像では組織染により過蛍光を示した。黄斑部の網膜下増殖組織は初期像で蛍光遮断よる低蛍光,後期像では組織染により過蛍光を示した。インドシアニングリーン蛍光造影眼底撮影では,左眼眼底の黄白色斑状病巣は造影早期から後期まで低蛍光を示し,脈絡膜中大血管の透見できる部位もみられた。約7か月後(写真)では,左眼の後極部から周辺部にかけて黄白色斑状病巣の数が増加し,黄斑部の星状の網膜下増殖組織と陳旧性の黄白色斑状病巣は拡大し辺縁の色素沈着が増強していた。文献的検索からmultifocal choroiditis associated with progressive subretinal fibrosisと考えられた症例である。
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