やさしい目で きびしい目で 41
こども病院に勤務して
山田 裕子
1
1兵庫県立こども病院
pp.785
発行日 2003年5月15日
Published Date 2003/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410101241
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兵庫県立こども病院に勤務して3年余りが経とうとしている。とりあえず,自分なりには一生懸命働いているつもりでいる。正直なところ,医学部に入ったころから小児眼科医を志していたというわけではない。なんとなくというのは不真面目に聞こえるかもしれないが,その時々の心境や状況の必然性から現在に至っている(言葉を換えれば,ただ流されてきたということかもしれない)。
これまでに,医師やナースになろうと思った,あるいは眼科に進もうと思った動機といった話題は,学生のころや,働き出してからも何度となく繰り返され,適当な理由が本音や建前で語られてきた。そのようななかで,幼少のころから思春期にかけて,斜視や弱視といった疾患で,この病院の眼科外来に何年と通い,手術の経験をもつ人たちに数人出会った。彼(女)らは,その多感な時期に味わった入院生活や手術,親に連れられ年に何度と受診する眼科外来での診察や検査といった経験を通じて,何かしらの感銘(もしかするとある意味トラウマなのか?)を受け,将来の進路についての意志決定には大いなる影響を与えたと語っていた。もちろん,こどもの感受性は個人差も大きいだろうし,斜視の手術をする大人の患者さんに話を聞いてみても,小さいころの手術の記憶なんてほとんど残っていない人も大勢いる。彼らはそういった意味では治療を受けた時期や期間にもよるが,めずらしく感受性豊かな人たちで,また自分の目指す進路につくことができたといった点では幸運な人たちともいえるだろう。ふと最近,自分の今の外来や手術を振り返ってみて,果たしてそのような思いをめぐらせるこどもたちがこれから現れるのだろうかと考えた。
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