特集 眼科における最新医工学
II.視機能再生工学
人工視覚
(5)脈絡膜上-経網膜刺激電極
神田 寛行
1
,
不二門 尚
2
,
田野 保雄
2
1大阪大学大学院医学研究科病態制御医学感覚機能形成学教室
2大阪大学大学院医学系研究科感覚器外科学眼科学視覚科学教室
pp.130-135
発行日 2005年10月30日
Published Date 2005/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410100202
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はじめに
人工網膜は,網膜神経回路への電気刺激によって生じる擬似光覚を利用して視覚機能の一部を代替することを目的としている1,2)。網膜疾患により視細胞が完全に消失し失明に至っても,網膜内層の神経細胞が残存していれば人工網膜の適応となりうる。進行した網膜色素変性症,自己免疫網膜症などが当面対象となるが,研究が進めば加齢黄斑変性などにも適応が拡大すると期待されている。
人工網膜は1990年代初頭よりアメリカやドイツを中心に欧米諸国から研究が始まった。これまで欧米の研究グループが開発を進めてきた人工網膜は,その網膜刺激方式によって網膜上刺激型と網膜下刺激型の大きく2つに分類できる。網膜上刺激型とは硝子体側から網膜に刺激電極を固定し,網膜へ電流を与える人工網膜である3~9)。網膜下刺激型とは神経網膜と色素上皮の間に電極を埋植し,網膜へ電流を与える人工網膜である10~12)。どのグループも実用化に向けて,それぞれの刺激方式の特徴を生かした人工網膜の開発に日々努力を重ねている。
わが国においても,人工網膜研究プロジェクトが開始された当初は,網膜下刺激型および網膜上刺激型の2つの方式に関して並行して研究が進められてきたが,より実現性が高い方法として,最近わが国独自の網膜刺激方式(脈絡膜上-経網膜電気刺激方式:STS方式)が考案された。一日でも早い臨床応用を目ざして,STS方式による人工網膜の研究開発が進められている。
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