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はじめに
角結膜は全身のなかで,最もアレルギー性疾患の起こりやすい組織の1つである。またわれわれ眼科医はあまり意識していないが,角結膜のアレルギーは全身の他の臓器,例えば鼻,皮膚,肺,消化管のアレルギーとは異なった病態や臨床像を示す。角結膜のアレルギー性疾患の治療法は進歩を続けているが,現在でも十分に治療をすることのできない症例もしばしばみられ,多くの解決すべき問題点が残っている。本稿では本特集全体の導入として,角結膜のアレルギー疾患,すなわちアレルギー性結膜疾患の臨床像,問題点,他臓器のアレルギー性疾患と比較した場合の特異性を記載したい。
「アレルギー性結膜疾患」とは特定の抗原に対する感作が成立した個人の結膜囊に抗原が侵入することによって引き起こされる,Ⅰ型アレルギーの関与する結膜の炎症性疾患の総称である。すなわち,①植物の花粉,ダニの死骸に代表される本来は生体に対して無害な抗原に対して生体が過剰に反応して大量の抗原特異的なIgEが産生され,肥満細胞上に結合する,②抗原に再び曝露されることにより肥満細胞上でIgE-高親和性IgE受容体複合体の架橋反応が生じ肥満細胞が活性化する,③肥満細胞から産生・放出されるヒスタミン,ロイコトリエン,サイトカインなどの生理活性物質による血管透過性の亢進,好酸球やリンパ球などの活性化などが誘導されて種々の臨床症状が発症する,という段階を経て発症する。原因となる抗原は国や地域により異なるが,わが国においてはスギ,ヒノキ,イネ科植物,キク科植物などの植物性の抗原やダニの死骸・排泄物,ネコやイヌの皮脂・皮膚上皮などの動物性の抗原が多い。アレルギー反応は血管や免疫系の細胞の豊富な結膜で引き起こされるが,涙液を介して炎症反応は隣接する組織である角膜にも影響を及ぼし,角結膜炎の病像を呈することも多い。
アレルギー性結膜疾患は他の臓器,例えば肺,皮膚,鼻,消化管などで引き起こされるアレルギー性疾患とアレルギー反応が引き起こされる契機である免疫反応自体は同一と考えられるが,表現される臨床像や問題点,治療法は他のアレルギー性疾患とは大きく異なっている。アレルギー学的な知見の単なる導入ではなく,眼科医が解決していかなければならない多くの問題点が残っている。
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