綜説
結膜杯細胞とアレルギー性結膜疾患
松澤 萌
1
,
安藤 智暁
2
,
海老原 伸行
1
,
北浦 次郎
2
1順天堂大学医学部附属浦安病院眼科
2順天堂大学大学院医学研究科 アトピー疾患研究センター
キーワード:
杯細胞(ゴブレットセル)
,
ムチン
,
シアル酸
,
糖鎖
,
goblet cell associated antigen passage
Keyword:
杯細胞(ゴブレットセル)
,
ムチン
,
シアル酸
,
糖鎖
,
goblet cell associated antigen passage
pp.461-469
発行日 2024年5月5日
Published Date 2024/5/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000003627
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アレルギー性結膜疾患(allergic conjunctival disease:ACD)の有病率は,わが国ではこの30年間に増加しており,1990年代の全国調査で12~15%前後であったものが1),現在ではおよそ45%とほぼ国民の半数を占めるに至っている2)。日本では人工的に植林されたスギ,ヒノキの花粉による花粉症が問題となっているため,他の国々と比較して頻度の高い疾患と思われがちであるが,米国における一般人口を対象とした調査では,1990年前後の調査で既に一般人口のおよそ40%に眼アレルギー症状を認めたと報告されており3),実は世界的に重要な健康問題である。それでは,この健康問題の舞台はなぜ結膜なのだろうか。よく知られているように,角膜組織は透明さを保つために血管構造を欠いているのに対し,組織内に豊富な血管を持つ結膜は,容易に血管内から免疫細胞を呼び込むことができ,眼表面における第一線の免疫器官としての役割を担うことができる。それゆえに,アレルゲン曝露の際には充血を起こし,アレルギー反応の舞台ともなる。本稿では,その結膜表面に存在する特殊な細胞である杯細胞に着目し,そのアレルゲン粒子に対する隔離・除去作用や,逆にアレルゲンを取り込む作用など,アレルギー性結膜炎の病態における重要な役割について,最新の知見を概説する。
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