臨床研修セミナー 手術手技
V.帝王切開
逆T字切開法
大谷 嘉明
1
,
宇津 正二
1
,
成田 喜代司
1
Yoshiaki Otani
1
1聖隷浜松病院産婦人科
pp.768-772
発行日 1990年9月10日
Published Date 1990/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409904879
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帝王切開術における逆T字(inverted T)切開法は,子宮頸部横切開の際に,切開創上縁の中央から子宮体部の方向に縦切開を加えて,子宮切開創を拡大する補助的な術式である。その目的は,子宮切開創を十分大きくすることにより児を損傷することなく,しかもできるだけ急速に娩出することにある。早産児の予後に影響を及ぼす産科的因子として,分娩時の頭蓋内出血や仮死が指摘されており1),早産,特に骨盤位の場合には帝王切開術が多くなるが,児に対して非侵襲的でスムースな娩出を実施するために,この逆T字切開法を実施せざるを得なかった経験のある産科医は多いと考えられる。また成熟児における帝王切開施行時にも,巨大児や子宮筋腫合併例など,本法施行を余儀なくされる場合がある。しかし,本法は通常の子宮頸部横切開法に比し,子宮筋への侵襲はかなり大きいものとなり,術後管理および次回の分娩対策については,子宮収縮不全や瘢痕治癒の問題などを含めて,子宮体部縦切開法に準じて行われるべきである。これらの問題を考慮した上で,まず逆T字切開法の手技について述べ,続いて当院における本法施行例について臨床的な検討を加えた。
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