今月の臨床 女性内科的アプローチ—循環器系を中心に
エストロゲンと心血管系
3.エストロゲンと血管に関する基礎知識
大道 正英
1
,
久本 浩司
1
,
神田 裕樹
1
,
村田 雄二
1
1大阪大学大学院医学系研究科器官制御外科学(産科学婦人科学)講座
pp.60-67
発行日 2002年1月10日
Published Date 2002/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409904524
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はじめに
わが国の疾病構造は,生活習慣の欧米化や高齢化などにより大きく変化しつつある.現在,死因の第一位は悪性新生物であるが,第二位の心疾患と第三位の脳血管疾患とを合計すると,悪性新生物を上まわるようになった.つまり,脳心血管系の疾患による死亡が第一位であり,全死因の約三割を占める.
動脈硬化による心血管系疾患の発症は加齢とともに上昇するが,女性と男性でやや異なり,女性の場合は閉経後に急増して55歳以降は男性と同等の発症率となる1).これは閉経によるエストロゲンレベルの低下による心血管系への保護作用の破綻がその大きな要因として考えられている.多くの疫学調査において,閉経後女性に対する女性ホルモン補充療法が,動脈硬化による心筋梗塞の発症を約半分に低下させるとの報告がある2).そのため,欧米においては,エストロゲン補充療法が,閉経後女性の死亡率を低下させる意味においても,多くの女性(40%前後)に施行されているのが現状である.
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