今月の臨床 女性内科的アプローチ—循環器系を中心に
エストロゲンと心血管系
4.新しいホルモン補充療法(SERM)
山本 伸一
1
,
野崎 雅裕
1
,
江上 りか
1
,
中野 仁雄
1
1九州大学大学院医学系研究院生殖病態生理学
pp.69-71
発行日 2002年1月10日
Published Date 2002/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409904525
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はじめに
エストロゲンは生殖器だけでなく,骨,心血管系,中枢神経系などの生殖器以外の組織に対しても,重要な役割を果たしている.閉経後女性に対するエストロゲン補充療法は,卵巣欠落症状を改善するだけでなく,更年期以降問題となってくる骨粗鬆症,動脈硬化などを予防し,QOLを改善すると考えられている.一方で,子宮体癌や乳癌のリスクが高まるといった懸念や子宮出血,乳房痛などの副作用を伴うことでエストロゲン補充療法に対するコンプライアンスは依然低いのが現状であり,またエストロゲン補充療法の大規模臨床試験であるHERSの結果より,エストロゲンの心血管系に対する有効性を疑問視する見方もあり,新たな薬剤として選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)に対して期待がよせられている.SERMはエストロゲンと異なり,標的組織によりエストロゲンレセプターのアゴニストとして作用したり,アンタゴニストとして作用し,現在までに多くの種類の薬剤が開発されてきた.その中でもラロキシフェンはベンゾチオフェン系のSERMで,現在欧米において骨粗鬆症の治療薬として広く使用されており,心血管系に対する作用に関しても多くの研究がなされ,抗動脈硬化作用も期待されている.そこで本稿では,ラロキシフェンの心血管系に対する作用,知見をもとにそれぞれの機序を概説する.
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