今月の臨床 ライフスタイルの変化と女性の健康
ライフスタイルの変化と悪性腫瘍
2.卵巣癌
小西 郁生
1
,
岡 賢二
1
1信州大学医学部産科婦人科学教室
pp.1118-1121
発行日 2001年10月10日
Published Date 2001/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409904448
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はじめに
わが国における卵巣癌の発生頻度は欧米と比べていまだ低いものの,近年明らかな増加傾向にあると考えられる.卵巣癌による死亡について厚生省人口動態統計をみると,1980年から1998年までの18年間で死亡者数が2,098から4,173と約2倍,人口10万対死亡率で3.5から6.5と明らかな上昇が認められている.また,卵巣癌の発生頻度に関する日本全体の正確なデータはないものの,International Agency for Research on Can—cerの報告によれば,日本のいくつかの地域における卵巣癌発生率の増加は各国と比べても際だっており1),わが国では近年卵巣癌の発生頻度が急増し,これに伴って死亡率も増加してきていると考えられる.このような卵巣癌の増加の要因として,環境要因に加えて,女性のライフスタイルの変化が大きく関与していると想像される.
従来より,卵巣癌発生のリスク因子として,遺伝的要因,生殖因子,人種差,生活習慣,環境因子などが重要と考えられてきた2)(表1).本稿では,近年の生活習慣の欧米化,就業女性の増加,晩婚,少産といった女性のライフスタイルの変化が,これらの因子にどのように直接的,間接的に影響して卵巣癌発生の増加に関与しているかを考えてみたい.
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