今月の臨床 Obstetrics is a bloody business
分娩時出血への対応
4.輸血,輸液の実際
英 久仁子
1
,
植田 充治
1
1聖バルナバ病院産婦人科
pp.674-677
発行日 2001年6月10日
Published Date 2001/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409904351
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
分娩はまさにbloody businessである.児の娩出までが順調に進んでいた症例が胎盤の娩出とともに一時に1,000ml以上の出血をきたし,出血性ショックで輸血を余儀なくされることもある.当院の統計(表1)でも分娩後2時間以内に500ml以上の出血を認めた症例は経腟分娩で12.8%,帝王切開では67.6%である.特に1,500ml以上の出血を認めた症例は経腟分娩1,445例中4例,帝王切開148例中12例であった.分娩時の出血量は基礎疾患や分娩の進行状況,既往分娩時の出血量などからある程度予測することができるが,急な出血により静脈が虚脱してしまうと輸血,輸液のための血管確保が困難になる.そのためすべての分娩に際し,あらかじめ血管確保を行うことは今や常識となっている.血管確保により輸血,輸液はもとより子宮収縮剤の迅速な投与やその他の薬剤の投与経路も確保されることとなる.また分娩に伴う呼吸法や発熱,嘔吐,下痢などによる不感蒸泄を補う上でも輸液は欠かすことのできない処置のひとつであると考えられる.輸血については最近ではその副作用が一般に流布されており,必要以上に拒否反応を示す患者や家族が見受けられる.医療者としても輸血は臓器移植のひとつであることを認識し,十分な知識と体制をもってこれに対応する必要がある.
本稿では,以上のような考えに基づいて当院で施行している基本的処置を示す.
Copyright © 2001, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.