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循環血液量,体液分布
正常人の循環血液量は75-80ml/kgであるが,やせた人,心疾患患者,妊婦ではややこれより多く,肥満者,老齢者は少ない.ショック症状が失血で生じた時は,循環血液量の1/4-1/3を失っていると考えられるが,循環の代償反射のためわずかな出血だけではショックに陥るものではない.貧血状態の患者が出血した場合には,血液の酸素運搬に大切な赤血球量の減少が表面に出て,組織への酸素供給が不十分になるのが早期から起こる.健常人が出血した場合にも酸素運搬能は1/4-1/3の出血量で低下するのである.
体重を50kgとして,このヒトで3.2-3.6lの血液が体内に分布するが,その半分以上は静脈側にあり,この部が血液量の増減に応じて拡張したり,収縮したりするのである.中等度出血(500-700ml)まではこの静脈側血管床が収縮して,循環動態を維持してくれる.さらに血管の成分はその周囲の組織液,狭義の細胞外液(9-11l/50kg),細胞内液(20l/5Okg)と平衡していて,末梢毛細管壁,リンパ管を介して血管内成分と交流している.出血により血管内の循環血液量が減ると,血管外から組織液が入って補ってくれる.これが完全に代償されるのには18-24時間ぐらいかかり,急な脱血直後では未だ血管外から内への水分の移動が起こっていないので,Ht値も低くなっていない.Ht値,Hb濃度は急性脱血期の指標になりえないことに注意する必要がある.失血の急性期を経過して後の,Hb濃度,Ht値は緊急の輸血・輸液がどの程度有効であったかの判定の手段として有用であり,これが低下しているようだと輸血が不十分で,細胞外液からの水分の移動が起こっていると考えてよい.
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