今月の臨床 Obstetrics is a bloody business
分娩時出血への対応
1.原因・頻度と鑑別診断
大口 昭英
1
,
佐藤 郁夫
1
1自治医科大学産科婦人科学教室
pp.660-664
発行日 2001年6月10日
Published Date 2001/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409904348
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はじめに
産科は,“出血を扱う仕事bloody business”といわれる1).母体死亡率は施設分娩の一般化と迅速な輸血供給体制の確立により劇的に減少してきているものの,母体死亡全体に占める分娩時出血の割合は今も無視できないくらいに多い.近年発表された妊産婦死亡調査2)によれば,1991年〜1992年の日本における妊産婦死亡に占める出血性ショックの割合は38%と高率であった(表1).さらに,専門家による協議の結果,出血性ショック症例の実に62%が救命可能と判定された.この結果について,われわれ産科医は真摯に耳を傾ける必要があるであろう.
成分輸血あるいは全血が速やかに利用できない状況下において,分娩時出血は母体にとって非常に危険な状態をもたらす.したがってすべての産科医は速やかに血液(血液製剤)を準備し,また患者が適切な医療を享受できるシステムを確立し維持することが必須である.例えば濃厚赤血球の備蓄,妊娠中の不規則抗体検査の実施,交叉血の採血/保存,ライン確保,出血量の計測,輸血が届くまでの輸液管理,夜間の凝固系検査体制,緊急手術体制,母体搬送システムなどについて,自施設の人的・物的資源,地理を考慮に入れた対応をコメディカルスタッフと十分に話し合っておく必要がある.
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