今月の臨床 母子感染—最新の管理指針を考える
細菌などの母子感染とその管理
4.梅毒
小林 範子
1
,
藤本 俊郎
1
,
佐川 正
1
,
藤本 征一郎
1
1北海道大学医学部産科婦人科教室
pp.1316-1320
発行日 2000年11月10日
Published Date 2000/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409904188
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はじめに
近年,特にAIDSを代表とする性行為感染症(STD)が社会的問題と考えられてきている.梅毒も性交による接触感染で始まるTrePonema Pal—lidum(TP)による全身感染症でSTDの代表的疾患の一つであり,他のSTDとの合併も多い.今日では第3,4期梅毒はほとんどみられなくなってきたが,早期顕性梅毒(第1期,2期の最も感染力の強い梅毒)は再び増加の傾向にあり,その半数以上が潜伏梅毒であるといわれている.したがって,症状がなくても検診などで偶然に発見されることも多い.
妊婦がTPに感染しTPが経胎盤性に胎児に感染すると先天梅毒となる.わが国では現在は妊娠初期の梅毒血清反応検査が普及しているが,検査が普及する以前は,先天梅毒児の出生や,自然流産,早産,死産,非免疫性胎児水腫,子宮内胎児発育遅延,新生児死亡なども認められることが多かった.Mascolaら1)は,妊娠の早期梅毒は未治療の場合,自然流産,死産,新生児死亡のいずれかになる確率が40%,先天梅毒児になる確率が40%であり,正常な児を娩出するのはわずか20%であると報告している.
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