今月の臨床 婦人科外来
外来処置・手術
4.びらんとCIN
奥田 博之
1
1岡山大学医学部産婦人科
pp.590-593
発行日 1999年4月10日
Published Date 1999/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409903632
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子宮腟部びらん
1.病態
子宮腟部に外子宮口を中心として,ほぼ同心円状,周囲との境界が明瞭な赤色領域を子宮腟部びらん(cervical erosion)とよぶ.この赤色領域は上皮欠損を伴う病理学的な真びらんではなく,1層の円柱上皮によって覆われた上皮下の血管が透見されて赤くみえる仮性びらん(偽びらん)である.頸管内膜の円柱上皮と子宮腟部表面の扁平上皮が接する部分を扁平円柱上皮境界(squamo—columnar junction:SCJ)とよぶが,このSCJは本来外子宮口部に位置している.思春期にエストロゲンの作用によって肥大した子宮頸部が外反することにより,SCJが外子宮口よりさらに外方に移動した結果,子宮腟部びらんが出現し,閉経後には逆に内反してみえなくなる.また,新生児では母体のエストロゲンの影響を受けるため子宮腟部びらんを認めることが多い.性成熟期にみられる子宮腟部びらんでは,しばしばSCJの円柱上皮細胞下に予備細胞(reserve cell)が出現,増殖,多層化して扁平上皮に分化しながら上部の円柱上皮を剥脱させ,表皮を扁平上皮に置き換える(扁平上皮化生squamous metaplasia).このような扁平上皮化生の進行とともにびらんは縮小するので,この生理的プロセスをびらんの治療機転とよぶ.
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