今月の臨床 胎児・新生児のBrain Damage
胎児期の脳損傷
5.TTTSと児の予後
伊藤 茂
1
1順天堂大学医学部産婦人科
pp.1157-1159
発行日 1998年9月10日
Published Date 1998/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409903395
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双胎間輸血症候群(twin to twin transfusionsyndrome:TTTS)は一絨毛膜性双胎における最も重症な合併症で,胎盤内の血管吻合を介して両児の循環動態が何らかの原因により変化し,結果的に両児の循環不全をきたす疾患である.TTTSではこの結果,一方もしくは両方の児が心不全や胎児仮死となったり,最悪の場合は一方もしくは両方の児が子宮内胎児死亡となることもある.このためTTTSの症例は未熟児で分娩となる症例が多く,その分,児の未熟性による中枢神経障害の発生リスクが他の単胎もしくは二絨毛膜性双胎の児より高くなる.
TTTSではそのような未熟性に伴う中枢神経障害のリスクに加え,両児の循環動態の変化により発生する胎児中枢神経障害も存在するため,その発生リスクはさらに高くなる.しかし,TTTSの発生機序が明確にされていない今日では,TTTSによる中枢神経障害の発症機序も不明な部分が多いのが現状である.
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