今月の臨床 難治性細菌感染症
婦人科の難治性感染症
7.難治性膀胱炎
小野寺 昭一
1
1東京慈恵会医科大学泌尿器科
pp.934-936
発行日 1998年7月10日
Published Date 1998/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409903336
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膀胱炎は尿路基礎疾患の有無により,単純性膀胱炎と複雑性膀胱炎に分類される.単純性膀胱炎は20〜30歳代の性活動期の女性に多くみられ,外尿道口周囲および腟前庭部に存在する細菌が尿道を経て上行性に膀胱に到達し定着して膀胱炎が成立する.起炎菌は大腸菌が主で約70%以上を占め,その他,クレブシエラやプロテウスなどのグラム陰性桿菌やコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)などが分離されるが,いずれも多くの抗菌薬に感受性を示し,その治療に苦慮することは少ない.一方,尿路に何らかの基礎疾患を有して発症する複雑性膀胱炎は,原則として基礎疾患を除去しないかぎりは根治させることが困難で,不適切な抗菌薬の投与により新たな薬剤耐性菌の出現をもたらす可能性もある.
膀胱炎が難治化する要因としてはこのような薬剤耐性菌が起炎菌となっている場合が多いと思われるが,泌尿器科で難治性膀胱炎として扱われるもののなかには細菌感染による膀胱炎だけではなく,結核性の膀胱炎や薬剤性の膀胱炎あるいは膀胱刺激症状を主症状とする膀胱上皮内癌なども含まれる.
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