連載 Estrogen Series・19
ピルと虚血性脳卒中(その1)
矢沢 珪二郎
1
1ハワイ大学
pp.980-981
発行日 1997年9月10日
Published Date 1997/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409903036
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経口避妊薬(oral contraceptive:OC)の使用が始まると間もなく,OC使用にともなうcere—brovascular accident(CVA:脳血管障害事故)がLorenz1)により報告された(1962年).その後に行われた1960年代から1970年代にわたるさまざまな疫学的研究は,OCと心血管系障害との関係を裏づけるものであった.この結果を受けて,それ以後のピルの低量化が行われた.現在全世界で6〜7千万人がピルを使用しているにもかかわらず,この心血管系障害という副作用は,いまだにピル使用時の不安要因として,その普及を妨げているものである.WHOでは,OC使用者で虚血性脳卒中(ischemic stroke)を起こした697例のケース(年齢20〜44歳)を21か国から集積し,それらを年齢のマッチした1962年のコントロール例と比較検討した(case-control study).この21か国にはヨーロッパ諸国もあり,また第三世界の諸国もあったので,先進諸国と開発途上諸国に区別して統計を集めたが,その詳細は本文では割愛させていただく.
この疫学的調査の結果はodds ratioで示されている.odds ratio=O.R.はこの場合ピルの非使用者が虚血性脳卒中を起こす確率とピル使用者が同疾患を起こす確率の比である.それはピル使用者が非使用者に対して持つ特定疾患発生の相対的危険度を示す方法である.
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