今月の臨床 不妊治療—ここが聞きたい
体外受精
7.採卵日固定法の実際とその成績は?
久保 春海
1
,
安部 裕司
1
1東邦大学医学部第1産科婦人科
pp.1490-1492
発行日 1996年11月10日
Published Date 1996/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409902755
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
近年,assisted reproductive technology(ART)として生殖医学が臨床不妊の場に導入されるようになってきた.体外受精—胚移植(IVF—ET)がARTの端緒として開始されて18年が経過し,一般的なART技術をよりいっそう簡略化して,広くこの技術を不妊治療に応用していこうとする傾向にある.こうした簡略化の流れはARTにおける卵巣刺激法(COH)においても,すでに1980年代中頃にピルを用いた人工的性周期によるCOHのプログラミングを試みた報告がみられる1,2).
近年,COHにGnRHアナログ(GnRHa)の併用法が発表されて以来3),ART周期の80%以上でGnRHa-hMG併用法が行われている.しかし症例ごとの個別化卵巣刺激法では毎日の通院,注射,採血,超音波による卵胞モニタリングなど患者の経済的,時間的負担や,数日前まで採卵日が未定なことによる患者の夫に対する社会生活の制約など計り知れないものがある.また医療サイドにも連日のモニタリングのための診療負担の増加,突然の採卵日決定によって,他の予定医療スケジュールとの兼ね合いが生じる人的,物理的混乱がARTを実施するうえで,大きな障害となっている。このような観点から通院期間を短縮し,採卵日,移植日を数週間前にプログラミングすることが可能となれば,ARTはemergencyとしてではなく,electiveに余裕をもって実施することができよう.
Copyright © 1996, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.