今月の臨床 これを読めばすべてわかる―最新の産婦人科超音波診断
V 不妊診療における超音波検査
採卵への応用
本田 育子
1
1山近記念総合病院産婦人科
pp.770-772
発行日 2010年4月10日
Published Date 2010/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409102372
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
産婦人科領域では超音波ガイド下の穿刺手技は,卵巣嚢腫(チョコレート嚢胞を含む)穿刺吸引,膿瘍穿刺吸引,異所性妊娠薬物治療,減胎手術などに行われるが,大きな割合を占めているのがART領域における採卵である.当初は全身麻酔と入院管理を要する腹腔鏡下採卵からスタートした採卵も,経腹的(経膀胱的)採卵1, 2),経腹超音波ガイド下経腟採卵を経て経腟プローブによる経腟採卵3)が行われるようになって久しい.採卵は超音波装置の開発改良と相俟って10mm程度の卵胞でも穿刺できるようになり,採卵の安全性,確実性は卵子回収率の上昇と外来ベースでのARTを可能にした.しかし子宮卵巣の手術後や子宮内膜症などで卵巣の位置が頭側に高く存在する症例では,いまだ経皮経腹採卵が行われ,また経子宮採卵を余儀なくされる症例もある.採卵室の超音波装置は比較的簡便なタイプが使われるが,穿刺針が入るポイントと卵巣との距離,卵巣周囲血管の状態などカラードプラ機能のある装置であらかじめ確認することが必要である.チョコレート嚢胞,卵巣嚢腫,卵管留症の存在は,月経周期初めのAFC検査時にチェックしておく.穿刺前には必ず排尿させ,便秘症の患者ではあらかじめ下剤を処方する.また採卵後の帰宅時には腹腔内出血や卵巣血腫の有無をチェックする.採卵後に強い疼痛の訴えがあったときは,すぐに超音波検査を行い,血圧や血算値の変動などに注意し,必要であれば入院管理とする.一般の手術前と同様の問診や術前検査で血液疾患や凝固因子異常のチェックを行う.
Copyright © 2010, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.