今月の臨床 婦人科腫瘍境界悪性—最近の知見と取り扱いの実際
取り扱い方針について
3-3.卵巣境界悪性病変—腹膜偽粘液腫の治療法
平林 光司
1
1国立福山病院
pp.1047-1049
発行日 1996年8月10日
Published Date 1996/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409902627
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腹膜偽粘液腫は,かつての日産婦学会分類では中間群に分類されていたが,現在では境界悪性腫瘍1)に含まれており,この名称は削除されている.そして卵巣原発と考えられる場合はその所見によって粘液性腫瘍の境界悪性に分類されている.
一方,WHO (1976年)が発表したICD-O2)(International Classification of Diseases-On—cology)ではより明確に本疾患を粘液性腺癌の腹膜転移性病変に分類している.本疾患は頻度としてはきわめて少ない(1.2%=21/1756)が,その5年生存率は59.4%3)で,卵巣原発の粘液性腺癌の64.7%と同様である.本疾患のおもな原発巣は卵巣(36.8%),虫垂(32.0%)4)であるが,不明なものも24.7%存在する.これらを総合して考えると,確かに低悪性度のものも存在するが,治療に際してはまず悪性との認識を持って積極的に化学療法を併用しなければならない.本稿ではこれまでに試みられてきた治療法を通覧するとともに,再発例に対して大量のcisplatinを安全に腹腔内投与しうる1つの試みとして,cisplatin-STS—AT-II(angiotensin II)2経路腹腔内投与法5)を紹介したい.
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