連載 シリーズ 胎芽の発育と形態形成・5
脳の発生
塩田 浩平
1,2
,
上部 千賀子
2
1京都大学医学研究科生体構造医学講座(形態形成機構学)
2京都大学医学部附属先天異常標本解析センター
pp.623-625
発行日 1996年5月10日
Published Date 1996/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409902526
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第4週に神経管が閉じる頃,その頭方端が膨らんで3つの一次脳胞(前脳胞,中脳胞,菱脳胞)ができる(図1—a).やがて前脳が間脳と終脳に,菱脳が後脳と髄脳に分かれる(二次脳胞).終脳は発達して後に大脳半球を形成し,中の腔が側脳室となる(図1—b, c).後脳からは橋と小脳が,髄脳からは延髄が発生する.成人の脳溝に対応する溝は5か月後半から現われるが(図2, 3),脳溝の発達や脳重量の増加は胎生期後半から周生期にかけて顕著になる.これはニューロンの伸長,シナプス形成,樹状突起の発達,髄鞘形成などに伴うものである.
前脳胞から左右の終脳胞ができる過程に異常が起こると,大脳半球の分割と嗅脳の形成が障害され,全前脳胞症holoprosencephalyと総称される奇形が生じる.全前脳胞症は,脳の奇形に対応した特異な顔貌の異常を伴うのが特徴で,最も極端な場合には単眼症となる.より軽度な型としては,篩頭症,猿頭症,正中唇裂を伴う無嗅脳症などがある.
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