連載 産婦人科クリニカルテクニック
ワンポイントレッスン—私のノウハウ
卵巣腫瘍摘出術における反型モスキート止血鉗子と反型メッツェンバウム剪刀の応用
長谷川 壽彦
1
1国立栃木病院
pp.197
発行日 1996年2月10日
Published Date 1996/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409902427
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卵巣腫瘍の手術は,腫瘍の性質,すなわち腫瘍が悪性なのか良性なのかで手術術式が異なる.とくに悪性腫瘍では,腫瘍の転移予防から腫瘍内容を腹腔内に漏らさない手術を行わなければならない.近年画像診断のための医療機器に格段の進歩がみられ,手術前に卵巣腫瘍の良性悪性鑑別診断を超音波断層法,CT, MRIなどの画像診断でかなりの程度まで正確に行えるようになった.さらに各種腫瘍マーカーを組み合わせることでその診断精度の向上をみている.診断精度向上にともない,卵巣機能温存の目的からも,術前に良性と診断される症例の手術は卵巣実質を残す腫瘍摘出術を選択する例が多くなっている.実際の手術に当たっては,たとえ腫瘍が良性の確率が高くても,悪性に関して万が一の用心と術野汚染を防ぐために腫瘍壁を破損してはならない.
卵巣腫瘍摘出術は,腫瘍壁から被膜化した卵巣実質の剥離作業で,その際最初に行う卵巣実質と腫瘍壁の輪状剥離が最も工夫を要する.すなわち腫瘍壁を破損するような大きな力が働かないようにする工夫といえる.通常婦人科手術で用いているコッヘルやペアン止血鉗子とクーパー剪刀は大きな力が働き微細な操作には適さないが,反型モスキート止血鉗子(モスキート)と反型メッツェンバウム剪刀(メッツェンバウム)はその操作を行うのに適している.
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