今月の臨床 病態生理の最前線—臨床へのフィードバック
腫瘍
9.子宮頸癌—ウイルス感染と発癌機構
岩坂 剛
1
1佐賀医科大学産婦人科
pp.441-447
発行日 1995年4月10日
Published Date 1995/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409902091
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●はじめに
子宮頸癌は前癌病変である異形成上皮として発生し,上皮内癌を経て浸潤癌へと移行してゆく一連の過程を取ることが知られている.一方,この過程の引金となる,あるいはこの過程を進める因子がなんであるかという疑問は子宮頸癌研究における長年の大きな研究課題であったし,まだ完全には解決されていないこれからの研究課題でもある.
1842年,イタリアの医師Dominico Rigoni—Sternは未婚婦人では既婚婦人に比べて子宮頸癌発生率が明らかに低く,しかも尼僧のような処女にはほとんど子宮頸癌が認められないことを報告した1).これは子宮頸癌発生に性交の関与を指摘した画期的な報告である.以後,これを裏づける多数の疫学的報告が積み重ねられ,子宮頸癌の病因が性交渉に関連していることがほぼ確実なものとなった.
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