今月の臨床 新しい薬物療法をさぐる
Overview
2.卵巣癌の化学療法シスプラチン耐性の克服を目指したsecond line chemotherapyの動向について
薬師寺 道明
1
,
清塚 康彦
1
1久留米大学医学部産婦人科
pp.14-18
発行日 1994年1月10日
Published Date 1994/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409901564
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癌化学療法の歴史を振り返ると,癌を薬剤で克服できると信じてきた素朴な願いを達成するための過程そのものであるように思われる.一方,そのために費やされた精力的な努力は,化学療法で治癒できる(可能性のある)癌が存在することを示したが,その奏効率の向上が必ずしも癌の死亡率の改善に果たした役割は大きいとはいえない.
卵巣悪性腫瘍の分野では,胚細胞腫瘍のように著しい成果が見られたものもあるが,癌の大部分を占める上皮性腫瘍では,ここ10年間に及ぶシスプラチン(CDDP)の臨床試査においても,一次奏効率の向上を見るのみである.しかし,婦人科癌の治療に従事する臨床医にとっては,たとえ進行期癌であっても癌化学療法は無意味でないというインパクトを得たことも事実である.すなわち,CDDPの登場が契機となり,卵巣癌の化学療法における薬剤の組み合わせ,投与法,副作用克服などに向けられた努力は,上皮性卵巣癌に対し,CAP療法をprimary chemotherapyとして位置づけることに成功した.しかし,その再発症例に対するsecond line agentsの選択は混迷を極める.
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