今月の臨床 治療にてこずる感染症
クラミジア
1.婦人科のクラミジア
笠松 高弘
1
Takahiro Kasamatsu
1
1東京都老人医療センター
pp.1036-1038
発行日 1993年9月10日
Published Date 1993/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409901426
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Chlamydia trachomatis(以下,クラミジアと記す)女性性器感染症は,現在最も多いSTD(sexuallytransmitted disease)の一つであり,わが国においても数年前から抗原および抗体検査が商業ベースでも可能となって,全国レベルで容易に検査できるようになるとともに知識も普及してきた。しかしその反面,症状の乏しさや有効な治療薬があることからクラミジアは抗生剤で簡単に治癒する単なるSTDであると軽視されてしまうこともあるように思う。逆に,クラミジア感染が直ちに流産や不妊に直結するかのように患者に過大な不安を与えてしまう場合もあるようであり,本疾患の病態はまだ未解明な部分が多い。
その要因の一つとして,われわれ産婦人科医が,普段相手にしている細菌やウイルスとは異なるクラミジア独特の生物学的特徴に慣れていないことがある。元来,クラミジアはヒトを自然宿主とする偏性細胞寄生性の生物であり,古来より人間に災禍をもたらしてきた。
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