今月の臨床 高年婦人科—更年期から老年期へ
治療上の問題点
24.高齢者手術療法のリスク
山片 重房
1
Shigefusa Yamagata
1
1石切生喜病院婦人科
pp.966-967
発行日 1992年8月10日
Published Date 1992/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409900974
- 有料閲覧
- 文献概要
高齢者への手術のリスクとは何か
かつては高齢を理由として手術が回避されたり,縮小されたりすることが通常であり,手術適用に年齢制限をおくことが一般的に行われていた。ところが社会の高齢化に伴い,手術の必要な高齢患者が増加したこと,麻酔・術後管理法の発達により手術の安全性が飛躍的に高まったこと,さらに高齢者が手術を受け,より高いQuality ofLifeを期するという考えが一般化したことなどがあいまって,近年,高齢者にも手術が積極的に実施されるようになってきた。
一方,手術侵襲は糖源の消費と補給した糖の利用低下,筋蛋白の崩壊とエネルギー源としての消費,下垂体・副腎系を中心としたホルモン分泌の亢進,細胞外液の細胞内への移動,Naイオンの貯留とKイオンの排泄,心拍出量の増大,凝固,線溶系の活性化など,さまざまな生体変化を起こさせる。これらの多くは創傷の治癒と感染などの外的要因から身をまもるための反応(ホメオスターシス)であるが,それが完遂されるためには各臓器の諸機能に通常状態よりも数倍高い予備能が備わっていることが必要である。高齢者では合併症として具体的な臓器機能異常を有している頻度が高いのみならず,この予備能が低下しており,術後にしばしば多臓器障害(multiple organ failure)に陥る可能性を含んでいる。
Copyright © 1992, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.