今月の臨床 子宮内膜症
治療と予後管理
23.対症療法
岡村 均
1
Hitoshi Okamura
1
1熊本大学医学部産科婦人科学教室
pp.68-69
発行日 1992年1月10日
Published Date 1992/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409900708
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子宮内膜症患者の代表的な症状としては骨盤痛と不妊が挙げられる。月経期に一致した下腹部や仙腰部などの骨盤痛(月経困難症)が最も特徴的である。一方,月経期とは関係なく骨盤痛が出現したり,排便時の肛門痛や性交時の骨盤深部の痛み(deep dyspareunia)を訴えたりするものも多く,その出現時期(月経周期との関連で)や程度は複雑多岐にわたり,一つの症状から本症を類推することは可能ではあるが確定診断に至ることはない。また症状と臨床進行期による重症度とは必ずしも一致しないことも本症の特徴である。これらの痛みの発生病理に関する現時点での知見は乏しく,さらに軽症子宮内膜症と不妊との問題にしても残された研究課題は多い。
なんらかの症状を訴え腹腔鏡検査で確定診断が得られた症例では,保存的な手術療法や異所性子宮内膜の増殖抑制あるいは枯渇を目的とした薬物療法(ダナゾールやGnRH analogue)を行うのが原則である。これらについては別稿で述べてあるので,本稿ではこれ以外の治療法を主に痛みと不妊に絞って述べてみたい。ただし,本症の対症療法には限界があり,進行性の疾患であるがゆえに,治療期間や重症度について十分に考慮することはいうまでもない。
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