総説
妊娠と副甲状腺機能異常
望月 眞人
1
,
小原 範之
1
,
森川 肇
1
Matsuto Mochizuki
1
1神戸大学医学部産科婦人科学教室
pp.111-118
発行日 1990年2月10日
Published Date 1990/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409900017
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
副甲状腺機能異常が妊娠に合併することは稀である。しかし,もし罹患すればシリアスなrisk factorとなる可能性がきわめて高い。たとえば,副甲状腺機能亢進症合併妊婦には膵炎,高血圧および副甲状腺発症が発現したり,また流産,子宮内胎児死亡,新生児テタニーや新生児に副甲状腺機能低下症などが生じることがある。
他方,副甲状腺機能低下症合併妊婦では血清カルシウムが低下することによりテタニーの発現する頻度が高く,また胎児の発育低下や新生児の副甲状腺機能亢進症が発症することがある。
これらの疾患の治療方針として,妊娠に合併した副甲状腺機能充進症の根治的治療は副甲状腺摘出術であり,この方法により母児の予後は著しく向上する。
妊娠に合併した副甲状腺機能低下症の治療は薬物療法が主体であり主にビタミンD製剤が用いられている。しかし,妊娠経過および産褥時を通じて母体のカルシウム需要が変動するので,慎重に薬剤を投与する必要がある。
Copyright © 1990, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.